構造設計の進め方とは

構造設計の進め方について

結論からスタートしますが、構造設計の仕事は基本的に以下の流れで進めます。
1.顧客要望の把握
2.構造計画
3.荷重計算
4.構造計算
5.構造図作成&構造計算書作成

簡単にそれぞれの目的を説明します。
1は、顧客の安全思想や必要としている空間を把握することが目的です。
実務では意匠図がすでにある事が多いため、意匠図を見て空間等を把握しなくてはいけないケースが多くあります。
2は、1で把握した内容をどのようにして実現するかを計画することが目的です。
この段階で、どの材料でどの構造形式で建築物を造るかを考えます。
3~5にて、構造計画の内容を具体化させていきます。

ただ、実務では上記の流れを一回するだけで仕事が完了するということは、ほとんどありません。
建築設計は、意匠設計・構造設計・設備設計の3つの分野があるため、ある程度設計が進んだ段階で各専門家と打合せを行い、デザイン・安全性・快適性・コストのバランスを調整して、よりよい建築物を建築することが重要です。

本記事では、構造設計スタート時に何から始めるべきかを説明します。

また、先に役割を理解している方が、本記事の内容もスムーズに理解できるかと思います。
以下記事で記載していますので、まだ読まれていない方は是非ご覧ください。
建築の構造設計とは

建築物の条件や顧客要求の把握

設計スタート時に先ず行う事は、状況の把握です。

よくよく考えてみれば、これは構造設計の仕事だけに言えることではありません。
何か物事を始める場合は、先ずは必要なモノ何を求められているかを考えていると思います。
皆さんも何かを始めようと思ったときに、スマホやPCで検索を始めますよね。
構造設計も一緒で「どこで/誰が/何を/いつまでに/何のために」建てるかを把握する必要があります。

建築物の条件と顧客要求を把握することで、そもそも仕事として成立するかどの程度の技量が必要かが判断でき、その後のステップをスムーズに進めるようになります。

建築物の条件の把握

先に「建築物の条件」について説明します。
建築物の条件とは、本記事の説明上は、変わる事の無い絶対条件と考えてください。

例えば、「どこで」の条件についてです。
雪の多い地域(多雪地域)で建築物を建てる際に、沖縄と同じ条件で建築物が作れるでしょうか。
山岳部や沿岸部で同じ条件で建築物が作れるでしょうか。
地盤が緩いもの強固なもの、粘土層や砂質層、ヨーロッパと日本など「どこで」によって大きく条件が異なることが容易に分かるかと思います。

上記によって、建設地特有の荷重や建築物に不利になりうる条件をピックアップします。
これは設計者の判断だけで決まる事ではなく、行政によって細かな規則(条例等)が決められています。
設計条件が厳しい場合は、もちろん相応の技量が必要ですし、時間もその分かかります。

また、「誰が・何を」の条件も絶対条件です。
この2つは見積・受注時に、すでに決まっていることです。
個人と公的機関では、建てるものの規模が違うことが多く、安全思想や用途も大きく異なります。
また、マンションと商業施設、図書館とホールなどを比べても想像しただけで建物に必要となる空間が大きく異なる事がわかります。
スパンを飛ばすとなると、構造種別や構造形式に制限が生まれます。

この3つの条件は、基本的に変わることはありませんので、把握することで必要な技量と仕事にかかる大まかな時間が把握できます。

顧客要求の把握

次に「顧客要求」についてです。
別記事でも書いていますが、顧客は基本的に建築構造のプロではありません。
ですので、顧客要求を把握し、構造設計者として改善できないかを考えることも仕事の一つです。

例えば、30階建ての高層ビルを1年半後までに建てたいと顧客が要求している場合や、
規模が小さいRC造の小屋を2か月で建ててほしいと言われた場合、皆さんはその仕事を受注するでしょうか。
これは、設計~施工までにかかる時間を考えるととても困難なことです。

いつまでに」というのは、顧客の都合によって決まります。
ですので、できる限り早く建ててほしいというのが顧客の本音です。
ただ、現実問題として設計者や施工管理者、職人の人手不足などで建物を建てるのにかかる時間というのは、以前よりも増えています。
少し設計者の仕事の枠から離れているかもしれませんが、このような問題も顧客に理解してもらい、仕事として成立させる必要があります。

また、「何のため」は、顧客要求を正確に聞き出すために必要です。
高層の建物を建てるとしても用途によって、構造計画が変わってきます。
オフィスの場合であれば、一室のスペースを広く取りたいという要望が多いと思います。
ホテルやマンションであれば、一室を広く取るというよりは、防音性を高くしてほしいなどがあるでしょう。
その他にも工場などで設備を扱う建築物であれば、通常の建築物よりも耐震性を求められたりします。

予算や用途などの顧客要求を把握することで、設計施工にかかる時間を考慮できるようになり、仕事として成立するかを判断できるようになります。
予算を守る事が必須であれば、規模を小さくしたり建屋レイアウトを変更したりもできますし、
建設地場所がすでに確定しているのであれば、予算拡充してもらうなどの妥協案の提案ができます。

もし成立しない場合は、顧客と打ち合わせを行い、解決案や妥協案を提示して、調整をする必要があります。
設計をすべて完了させても建築できなければ、何も意味がありません。
上記の2つを把握し、構造設計という立場から何に時間とコストがかかるかを判断して、仕事として成立させてから次のステップに入るように意識をしましょう。

まとめ

構造設計の進め方と設計スタート時に行うべきことは、上記の通りです。

流れを理解した上で、一つ一つを着実にこなすことでより良い設計となります。
また、本記事にて説明したスタート時に行うべきことについては、後戻りするとなると構造計画からやり直しになりうる設計の根本の業務となります。

性能面やコスト面、時間の都合など気にすべきことは、たくさんあります。
その問題をすり合わせるためにも条件と要求の把握は着実に進めましょう。

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