建築の構造設計とは

構造の基礎

はじめに

建築における構造設計とは、どのような役割でしょうか。
建築物を成り立たせる骨組み? 人命を守るため? 品質や環境保全を担うもの?
一言で説明するとなると設計へ考え方、立場、仕事内容によって大きく変わるかもしれません。
本サイトでは、一般的な構造設計の役割や求められる能力について説明していきます。

構造設計の役割

構造設計の主となる役割は「必要な空間を確保するための骨組み(フレーム)を考える」ことです。
これは、建築物が成り立てばいいわけでは無く、要求に合った安全性を確保することが重要になります。

要求に合った安全性の確保は、二つの視点から考える必要があります。
・「場所」によって要求される安全性
・「用途」によって要求させる安全性

また、構造設計は安全性を考える反面、どこまで危険性を許容するかを考える仕事でもあります。
安全性が重要なことのはずなのに、なぜ危険性を許容する必要があるのでしょうか。
二つの安全性と危険性の許容を絡めて説明していきます。

「場所」によって要求される安全性

場所」によって要求される安全性とは、一体何のことを指すでしょうか。
皆さんの身近で分かりやすい例は、自然災害です。

皆さんは、自然災害といえば何を思い浮かべますか?
おそらく、この質問を投げかけた際は老若男女問わず、地震と回答する人が多いのでないでしょうか。
また、人によっては台風と答えたり、大雪と答える人もいるかもしれません。

つまり「場所」によって要求される安全性とは、建設地特有の環境から身を守るための安全性のことです。
建設地特有の環境とは、自然災害以外にも気候や地盤、行政が定めた条例など様々なものがあります。
実際に沖縄で大雪の危険性はほとんど考えませんし、沿岸部では塩害を考慮する必要があるなど考え始めたらその場所特有の危険性は様々なパターンがあるかと思います。

「用途」によって要求される安全性

次に「用途」によって要求される安全性とは、一体何を指すでしょうか。
これは例を挙げるのが難しいのすが、一般住宅と学校などを比べるとわかりやすいです。

災害が起きると家を離れて学校などの公共施設に避難してくださいと報道されることが多いと思います。
まさにこれが、用途によって要求される安全性が違うということです。
なぜ、このようなことが起きるのかを考えると「危険性の許容」がキーワードになってきます。

先ほどの例を参考にしてみましょう。
もし、自分が家を建てるとすれば皆さんは、住宅の安全性にどこまで期待をしますか?
今までの震災や隣家の火事に巻き込まれないような家を作る!なんて意気込む人は極少数かと思います。
それはなぜかというと、経験則からそのような事態になる危険性は低いし、災害保険もあるから大丈夫と考えているからでしょう。
建築物を作る際は、コストと安全性を天秤にかけて、ある程度の危険性を許容しているのです。

逆に避難場所や公共機関などの災害時に機能がストップしてしまうと困る建築物に対しては、安全率を割増して、安全性を確保しているのです。

用途」によって要求される安全性とは、主に災害時に何が求められるかで決める安全性のことです。
基本的には行政 or 企業 or 個人などのくくりで決めることが多いですので、実務で扱うかどうかは、人によるといった感じです。

構造設計に求められる能力

構造設計者に求められる能力とは、どのようなものでしょうか。
正直な所、その個人が携わる分野や業務内容によって、1番重要なことというのは変わると思います。
様々な目線があると思いますが、今回はどの分野でも重要となるような基礎の部分を記述します。
※どうしても主観が強くなってしまいますので、苦手な方は読み飛ばして下さい。

顧客要求を汲み取る力

日本では、海外に比べても自然災害の多い国です。
実際に地震・台風・大雪などが、毎年どこかで猛威を振るっています。
構造設計者は、このような中で安全性を考慮した設計をする必要があります。

しかし、これはただ単純に安全性の高い建築物を作れば良いという話ではありません。
ここでも前述した「安全性と危険性の天秤」の話が出てきます。
建築には、基本的に安全性を高くする=建設コストが高くなるという条件があります。
また、安全性確保のために部材を大きくしたり、ブレースをむやみに入れたりすると顧客が期待していた空間が得られなくなってしまう可能性があります。

当然のことですが、顧客は建築構造のプロでないことがほとんどです。
構造設計の立場として求められる能力は、「危険性の有無と大きさ」「安全性確保のために犠牲になる事があること」を顧客に正確に伝え、双方のバランスを取った設計を提案ができることだと私は思っています。

効率的な骨組みを考える力

上記に加えてもう一つ大切な事は、モノの性質や力の流れを知っているという事です。

前述した通りで、構造設計者の役割は「骨組みを考えること」です。
構造解析ソフトや数学に強いなどは、長所となる事には間違いないですが、何よりも大事な事は、
コンクリートや鉄鋼、木材のメリット・デメリットを理解していることです。

そしてそれを骨組みに反映できることが重要です。
一般住宅で鉄筋コンクリート造は少ないですし、高層マンションで木造という事もあり得ません。
それは求められる条件が違い、それに合わせて構造種別(材料)構造形式(骨組み)を計画するからです。

この力が身につけば、顧客が構築したいデザインや空間を構造設計の立場からサポートすることができます。
意匠設計(デザイン)の可否を判断し、不可能の場合は、どのようなアプローチで顧客のニーズに答えるかを考えることが構造設計者に求められる2つ目の能力だと私は考えています。

まとめ

構造設計者に期待されるものは、以下の3つです。

・必要な安全性の確保
・デザインに適した空間の設計
・コストの削減

この3つは個々に考えるものではなく、相互に結びついているものです。
それぞれの比重は、顧客によっても異なるため、バランスを取る事が重要です。

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